2004-03-04 [J]
■ 殺人を犯さない日本の「今の」若者
くり返しになりますが、「少年による凶悪犯罪の急増」関連ニュースを。
■中高年犯罪こそ社会を映す鏡 疎外感が生むリスク行動青少年による殺人は、長い目でみれば激減しており、20歳未満の少年でもピーク時の4分の1となっている。生物学的立場から殺人を研究している長谷川真理子・早大教授の分析によると、人口100万人あたりで殺人を犯した人の割合(殺人率)で見ると、90年代に入ってから青少年より40歳以上の中高年男性の方が高くなっているという。
(毎日新聞2001年1月19日東京朝刊)
■49歳なぜキレる95年から99年までに全国で殺人(未遂や予備を含む)事件で逮捕、書類送検された容疑者計6499人の年齢(犯行時)を警察庁が調べたところ、49歳が最も多いことがわかった。強盗殺人や傷害致死などの凶悪事件を加えた統計でも、49歳は17歳と18歳に次いで3番目に多い。過労死や自殺など中高年問題を扱う専門家たちは、老後への不安、仕事や家庭でストレスを感じ、人生の岐路に立つ不安定な世代であることが背景にあると分析している。
殺人という凶行に走るのは17歳よりも49歳が多かった。心も体も発展途上の少年らよりも、分別をわきまえたはずの壮年たちが、事件を引き起こしている。
(朝日新聞)
■人権と報道・連絡会 第16回シンポ 資料▽実態のない「少年犯罪の急増」
犯罪白書など各種の統計や大阪弁護士会の調査によると、少年犯罪は「急増」も「凶悪化」もしていない。戦後三回急増したが、九〇年代後半の一時的増加は、そう顕著ではない。凶悪化しているとか、動機なき不可解な殺人が増えているというのもデマである。戦後すぐから、理解不能な事件はあった。
警察は少年犯罪摘発に力を入れているし、単なる引ったくり事件に強盗罪を適用するのにも熱心だ。「科学」(岩波書店)二○○○年六月号の長谷川寿一・長谷川真理子論文「戦後日本の殺人動向」は、日本ほど若者の犯罪が少ない国はないこと、日本だけ母親による嬰児殺しが極端に多いことや、十代後半から二十代前半の殺人が激減していることを指摘している。少年の殺人率は低下し続けている。
先日(3/3)放送されたNHKの番組『視点・論点』に出演された早稲田大学教授の長谷川真理子さんによると、過去40年日本の若者の殺人は急激に減り続け、彼らは世界的に見ても珍しい「殺人を犯さない若者」となっているそうです。
また、犯罪精神医学の影山任佐東工大教授によると、ドイツでは「日本では、なぜ殺人が起こるのかということより、なぜ起こらないかを研究した方が良い」と書いた犯罪学の教科書まであるとの事です。
にも拘らず、「少年による凶悪犯罪の急増」を口実に、青少年やその環境を管理・規制しようとするのは、非常に問題があります。過剰報道に歪められた「凶悪な若者・少年像」に怯えて青少年達をがんじがらめの世界に閉じ込めてしまうのではなく、世界的にも稀有な「殺人を犯さない若者」の権利をもっと尊重し、その意見を政治に組み入れる努力をしてゆくべきだと私は思います。