2005-03-11 [J]
■ 警察庁資料
キタ。コレ→『子ども対象・暴力的性犯罪の再犯防止対策について』
……と言うか、キテます。てゆうか、ふざけてます。
色々書きたい事はあるのですが、只今超修羅場中の為、コメントをしている時間がありません。ので、progressive linkさんとことか、児童小銃さんとこを読んで下さると有難かったり。
■ 警察庁の広報資料について
平成17年3月3日(WEBでは3月8日)に出された、警察庁の広報資料「子ども対象・暴力的性犯罪の再犯防止対策について」について、コメントする時間が出来たので、早速コメントおば。長文ナリ
(1) 子ども対象・暴力的性犯罪の被疑者の犯罪経歴調査結果
平成16年に警察が検挙した子ども対象・暴力的性犯罪の被疑者466人について犯罪経歴を調査した。
ア ある犯罪を犯した者が再び同じ犯罪を犯す可能性をみるためには、ある犯罪の検挙人員のうち同一の犯罪の経歴を持つ者の割合(再犯者率)をみることが有効。
すでに各所で指摘されているが、これは端的に間違いである。再犯者率からは、検挙者中に占める再犯者の割合が分かる事から、再犯性の「一端」をみる事は出来るが、ある犯罪を犯した者が再び同じ犯罪を犯す可能性をみる事は出来ない。
ある犯罪を犯した者が再び同じ犯罪を犯す可能性をみるためには、ある犯罪を犯した者が、再び同じ犯罪を犯す確率(再犯率)をみなければならない。
現在のところ、犯罪類型ごとの再犯率を警察庁が調査した資料は示されていないが、法務省の保護統計等によれば、性犯罪の再犯率は財産犯や暴力犯罪に比べて、必ずしも高いとはいえないと思われる。
子ども対象・暴力的性犯罪の再犯者率は15.9%であり、他の犯罪の再犯者率(傷害(20.6%)、恐喝(20.1%)、詐欺(19.8%)、窃盗(18.6%)等)と比べて必ずしも高くないことから、子ども対象・暴力的性犯罪を犯した者がそれを繰り返す可能性は、他の罪種の犯罪者がその罪を繰り返す(資料図表1及び図表2) 可能性に比べて高いとは必ずしもいえない。
子ども対象・暴力的性犯罪の再犯者率が15.9%であり、他の犯罪の再犯者率と比べて高くないことは事実であるが、前に述べた通り、再犯者率からは「ある犯罪を犯した者が再び同じ犯罪を犯す可能性」を見ることは出来ない。再犯者率から再犯性を読む場合、参考程度に留めるべきである。
イ 平成16年の子ども対象・暴力的性犯罪者466人中、過去に何らかの犯罪経歴があった者は193人であった。
この193人のうち、過去の犯罪も子ども対象・暴力的性犯罪であった者は74人(38.3%)に上る一方、他の犯罪経歴のある者は119人(61.7%)であった。平成16年の全刑法犯検挙人員約39万人のうち、子ども対象・暴力的性犯罪の検挙人員466人が占める割合は0.1%にすぎないことを考えれば、何らかの犯罪経歴がある者のうち、極めて少数の子ども対象・暴力的性犯罪の経歴を有する者が、同じ子ども対象・暴力的性犯罪の4割近くを引き起こしていることを示している。このことは、子ども対象・暴力的性犯罪が、子ども被害性犯罪の経歴者により引き起こされる(資料図表3) 可能性が極めて高いことを示している。
この論は悪質なミスリードである。「全刑法犯検挙人員約39万人のうち、子ども対象・暴力的性犯罪の検挙人員466人が占める割合は0.1%にすぎない」のは事実であるが、これはあくまで、1年間の検挙者から割り出した値であって、追跡調査等を行なっている訳ではない。
この為、「子ども対象・暴力的性犯罪の経歴を有する者」が、「極めて少数」であるかどうかは憶測の域を出ない。また、例えば窃盗罪等の手口を絞り込めば、同様またはそれ以下の「極めて少数の数値」の作成が可能であり、無意味な印象操作であると言わざるを得ない。
また、「何らかの犯罪経歴がある者のうち、極めて少数の子ども対象・暴力的性犯罪の経歴を有する者が子ども対象・暴力的性犯罪の4割近くを引き起こしていることを示している」も、悪質なミスリードである。
そもそも全体の検挙者数が少ない(全刑法犯の0.1%しかない)のだから、「極めて少数」の者たちで、再犯者率15.9%という一定の「割合」を占めたとしてもなんら問題ではない*1。ここで、問題とすべきはあくまでも再犯者率であるが、それは決して高くない(15.9%)。
さらに、再犯者の58.6%(273人)を占める「過去に犯罪経歴がなかった者」を、故意に無視する事で、『4割』という高い数値を出してきているが、比較的再犯者率の高い他の犯罪で、「過去に犯罪経歴がなかった者を無視して計算」すれば、簡単に『4割』以上の数値が作成可能であり、これもまったく意味がない、悪質なミスリードである。警察がこのような印象操作を行なう事は極めて悪質と言える。
実態は、同資料のア に示されている通りであり、過去にも子ども対象・暴力的性犯罪を行なった者の割合は、15.9%にすぎず、これらは他の犯罪の再犯者率(傷害(20.6%)、恐喝(20.1%)、詐欺(19.8%)、窃盗(18.6%)等)と比べて必ずしも高くなく、「子ども対象・暴力的性犯罪が、子ども被害性犯罪の経歴者により引き起こされる可能性が極めて高い」とは言えない事が分かる。
よって、結論の「子ども対象・暴力的性犯罪が、子ども被害性犯罪の経歴者により引き起こされる可能性が極めて高いことを示している」は誤りである。
ウ 従って、子ども対象・暴力的性犯罪を防止するためには、それを犯した者を把握することが有効である。
子ども対象・暴力的性犯罪は、そのほとんど(84.1%)が、過去に「子ども対象・暴力的性犯罪」を犯していない者によって行なわれており、「子ども対象・暴力的性犯罪を防止するためには、それを犯した者を把握することが有効である」との主張には、あまり説得力はない。
(2) 子ども対象・強姦の被疑者の再犯状況調査中間結果
科学警察研究所において、昭和57年から平成9年までの間に警察が検挙した子ども対象・強姦事件被疑者527人のうち追跡可能な506人について、16年6月末までの再犯状況を調査した。
ア 全体の20.4%に当たる103人が検挙後に再び強姦又は強制わいせつの再犯に及んでおり、うち子どもを被害者としたものは47人であり、性犯罪を行う場合には再び子どもを狙う割合が高いことを示している。
再び子どもを狙った犯罪で検挙された者は、506人中47人(9.3%)であり、「再び子どもを狙う割合が高い」とまでは言えないと思われる。
また、性犯罪の再犯に限っても、その半分が子ども以外に対する犯行へと変化しており、従来言われていたように、「児童を対象とした性犯罪者は、性癖が固定している」とは言えない事が伺える。
この事は、平成11年の「科学警察研究所」の調査でも、指摘されていた事であり、「性犯罪を行う場合には再び子どもを狙う割合が高いことを示している」との論は誤りである。
イ 対象事件以前にも暴力的性犯罪(被害者年齢を問わない)の犯罪経歴がある者は、そうでない者に比べて強姦又は強制わいせつの再犯に及ん(資料図表4) だ者が2.5倍であった。
ここは重要ですので、分かりやすく言うと、暴力的性犯罪の犯罪経歴が2回
また、暴力的性犯罪の再犯をみると、暴力的性犯罪前歴の有無に関わらず、半数以上が対象を子ども以外に変化させている事から「性癖が固定しているとは言えない」事が伺えます。これは「子ども以外を対象とした暴力的性犯罪者も、子どもに対する性犯罪を行なう可能性がある」と言う事を示していると思われます。
子どもを対象とした暴力的性犯罪の抑止の為に、警察が把握すべきなのは、「子ども対象・暴力的性犯罪者」ではなく、「暴力的性犯罪の前科が2犯以上の者」なのではないでしょうか。
もちろん、更生の為の必要な措置を講じたうえでの話です。
*1 progressive linkで、分かりやすく説明してくれてますです
■ 矯正教育の義務化
そんなこんなで、更生の為に必要な措置が、ゆっくりと始動し始めているモヨリ。
政府は11日午前の閣議で、性犯罪者ら受刑者に対する刑務所での矯正教育の義務化や、民間人で構成する刑事施設視察委員会設置などを盛り込んだ受刑者処遇法案を決定した。今国会に提出、成立を目指す。
名古屋刑務所の受刑者死傷事件を受け、受刑者の権利・義務が不明確との批判が強かった監獄法を約100年ぶりに一新し、処遇を改善するのが狙い。同法の条文のうち、判決が確定した受刑者の処遇規定を抜き出して受刑者処遇法として改正。判決確定前の被告・容疑者の規定は、刑事被告人収容法として存続させ、監獄法の名称は消滅する。
受刑者処遇法案では、作業中心だった受刑者の処遇を改め、再犯防止策の一環として、これまで任意だった矯正教育を義務化。刑務所運営を透明化するため、刑務所ごとに民間人で構成する刑事施設視察委員会を設置し意見を聞くほか、受刑者の不服申し立て制度も整備する。
[Yahoo!ニュース(共同通信3月11日)より引用]
取り敢えず、作業中心だった受刑者の処遇を改めて、矯正教育を義務化するのは良いことだと思いますです。あと、受刑者の不服申し立て制度の整備も。
梅太郎さんが詳しく解説を入れているのでもういいかなと思ったものの、0.1%当たりの議論がちょっと気になったのでもう少し説明。 警察発表にある平成16年の全刑法犯検挙人員約39万人のうち、子ども対象・暴力的性犯罪の検挙人員466人が占める割合は0.1%にすぎないことを..