2005-03-08 [J]
■ 「25%が性犯罪検挙歴」のカラクリ
先日、『警察庁の調査により、児童を対象とした性犯罪の再犯者率や再犯率が、他の犯罪に比べて高い事が分かった』という趣旨の報道がありましたが、果たしてそれは事実なのでしょうか?
暴力的性犯罪:25%が性犯罪検挙歴 再犯率調査
出所者情報の提供を法務省から受ける基礎資料の一つとするため、警察庁は子ども(13歳未満)を対象にした暴力的性犯罪者(強姦(ごうかん)、強盗強姦、強制わいせつ、わいせつ目的略取・誘拐)の再犯率を緊急調査した。昨年1年間に検挙された466人のうち、過去にも子どもに暴力的性犯罪を加えた検挙歴のある者の割合(再犯者率)は16%(74人)だった。
過去になんらかの検挙歴があった者は193人。このうち、性的犯罪で検挙歴のある者は120人で、全体のおよそ4人に1人(25%)の割合。子ども対象の暴力的性犯罪のほか、下着盗、児童買春、青少年保護育成条例違反(淫行(いんこう))など他の性的犯罪が28人▽子ども以外を対象にした暴力的性犯罪が18人。子供を対象とした暴力的性犯罪者が何らかの性犯罪を繰り返す再犯者率は、傷害・恐喝(各20%)、窃盗(19%)、詐欺(18%)などを上回っている。
[MSN-Mainichi INTERACTIVE 今日の話題(2005年3月4日)より引用]
今回、警察庁がどのような計算方法を用いたのかというと、
分母を
・被害者の年齢を13歳未満に限定する
・罪種を強姦、強盗強姦、強制わいせつ、わいせつ目的略取・誘拐の四罪種に限定する
分子を
・被害者の年齢を限定しない
・罪種を強姦、強盗強姦、強制わいせつ、わいせつ目的略取・誘拐の四罪種に限定せず、下着盗、児童買春、青少年保護育成条例違反(淫行)等を加えてあらゆる性犯罪を網羅する
……という物でした。
比較の為に、これと同様の操作を、平成15年の犯罪 45 窃盗 手口別 前科数別 検挙人員(成人表)のデータを用いて、窃盗について行ってみる事にしましょう。*1
分母を
・ある一つの手口、またはより包括的な一つの手口(侵入盗、乗物盗、非侵入盗)に限定する。
分子を
・一つの手口に限定せず、あらゆる窃盗の手口を網羅する。
……その結果、25%の再犯者率は「ざら」である事が分かりました。例えば、すり43.8%、病院荒し43.8%、忍込み42.3%、居空き39.8%、車上ねらい39.1%……と言った具合です(窃盗罪の再犯者率参照)。
つまり、『警察庁の調査により、児童を対象とした性犯罪の再犯者率が、他の犯罪に比べて高い事が分かった』との報道は、「間違いである」と、言えそうです。
なお、再犯率については、元データが公表されて無いので、検証は出来ませんが、同様の「操作」を行なった罪種と、「操作」を行なわなかった罪種を比較すれば、「操作」を行なった罪種の方の再犯率が、大きくなったとしても、なんら不思議な事ではありません。
【参考リンク】 窃盗罪の再犯者率 警察庁の再犯率統計が公開
【参考記事】 警察庁による再犯率まとめ!?
*1 てゆうか、知人に計算してもらったんですが(;^^)
警察発表の分子ですが、被害者の年齢を指定しないというよりも、発表の中でごたまぜにしているといった方が正しいかなと思います。そっちの方がタチが悪いと言えるのですが。<br>警察が発表の時に使った資料とかがあれば見たいものですね
>被害者の年齢を指定しないというよりも、発表の中でごたまぜにしているといった方が正しいかなと思います。<br>確かにその書き方の方が正しいですね。あと、私個人としては「分子の年齢を特定してしまうと、性犯罪の再犯性が過度に低く見積もられてしまう可能性がある」と考えているので、「分子の年齢を特定しなかった事」そのものについては、あまり問題だと思って無かったりします。<br>ただ、「分子の年齢を特定しない」かつ、「分母の年齢を特定しない場合との比較も無い」以上、その方式で算出されたデータからは「児童に対する性犯罪は再犯性が高い」或いは「児童を対象とした性犯罪者は、成人を対象とした性犯罪者よりも、性犯罪全般の再犯が多い」とは、言えない筈なんですが、その辺の事がマスコミ各社は分かってないんですよね。
警察はね、ただ数さえ出せば、良いという考えで発表しているから、あんな数字で発表しているのかなと私は警察の発表に疑問を持っているのです。