2006-04-09 [J]
■ ゲーム脳関連記事紹介
◇ゲーム脳・早期教育検証を−−ミスリード多過ぎる
〔……〕
脳研究に詳しい人は「いまさら『ゲーム脳』批判もないだろう」と思われるかもしれない。しかしこの“学説”はいまだに多くの人に科学として信じられ、教育委員会が講演会を主催するほどなのである。
3月、教授の講演会に足を運んだ。教授の口からは私の記事への批判が何回か出てきた。それはまあいいのだが、怖いのは聴講した人たちの反応だ。「テレビゲームをやり過ぎると、脳が認知症患者と同じようになっていく」という主張を、無批判に受け入れているようなのだ。「科学的な裏づけがある」と信じているのだろうが、実はそうではない。ゲーム脳は確かに、問題提起としては悪くない。子供のゲーム好きを苦々しく思っている大人から見れば、我が意を得たりといったところだろう。だが、科学的な研究でゲーム脳の恐怖を突き止めたように世間に広めるのは、いささか度が過ぎるのではないか。
教授が言うように、前頭前野のα波、β波の増減データから前頭葉が働かなくなったとは言えない。そもそも脳波を測定した機器にも問題がある。脳科学者の久保田競氏(京都大名誉教授)は「彼がやらなければならないのは、自分の作った脳波計で正しく脳波が取れていることを、脳波の関係学会で発表することです。それすらやっていませんね」と手厳しい。
理系的な側面から追及しなくても、論理的な破綻(はたん)は随所に見られる。「議論のウソ」(小笠原喜康著、講談社)が分かりやすく指摘しているので、興味のある方は参考にしてほしい。
「脳科学」を冠した非科学的な書籍が今、いかに多いことか。だが、こうした“研究”の広がりによって、脳科学とはこの程度のものか、と思われるのは困ったことだ。業を煮やした「日本神経科学学会」(会長・津本忠治大阪大名誉教授)は会報「06年1号」で次のように書いている。
「論理の飛躍した本は研究者としては、相手にしない、あるいは放置しておけばいいとの見方もあるかもしれません。しかしながら(略)間違っている場合は基礎的な神経科学研究の重要性の理解を減弱させ、また神経科学に対する信頼性を損なうという種々のマイナス効果を生み出すと思われます」
[毎日新聞2006年4月7日より引用]
時間が無いので記事の紹介のみ。